2016/05/13

[北朝鮮映画] 花を売る乙女 (1972) その2

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③実は、スンヒちゃんが盲目になったエピソードにも、
ちゃーんと共産主義思想からめられてある。
さすが、革命啓蒙映画!


それは、スンヒちゃんが地主の家で、縁側に干してあった山人参を好奇心から触ろうとした時、地主に思いきりはたかれ、鉄瓶の熱湯を浴びて失明してしまったことにある。


ぎゃー!目が痛い~


ぐぎー。目が見えないよー。

ここもやはり、地主山人参(高級食材)、いたいけな子供という単語は関連性をもっている。

地主ブルジョワジーであり、しかもこの地主クリスチャンという設定。

ブルジョワジーな地主が、高級食材で贅沢をし、いたいけな子供たち(貧しい者たち)から搾取するという構図

革命闘志よ、この不平等、階級的搾取を許すな!

というプロパガンダを込めて、

地主は、映画では、終始とーっても悪者扱い
さいこーに意地わるーく演出されてます。

地主さん夫婦。顔からして悪魔的。

しかし、この映画の意図はさておいても、
やっぱりわたしはスンヒちゃんの演技にとても感動したのである。

ほんとーにこのスンヒちゃんの演技すばらしかった。

この子役は、きっとものすごい倍率を勝ち抜いて
選ばれた優秀な子なんだろう・・・

芦田愛菜さん以上の演技力があると思うぞ。

日本のプロダクション、彼女を引き抜け!
あ、もうすでに50才にはなってるか・・・


演技力を超えた可憐さというか、かわいさの中に、もう誰にもマネできないだろうぐらいの気高さ、美しさがこの子の演技にはあったと思う。

なんだろう。心がこれほど洗われるぐらいに思えるのは。
不思議だわ。

(ああ、洗脳されてる洗脳されてる・・・。わたしも近い将来先軍女子・・・)



④うす汚れた資本主義の毒牙犯されまくっているわたしは、
 どうしてもこーいった共産主義思想満載の映画ってよくわからないのよね。
 
 だって、なにをしても食っていこうってわたしたちなら思うのに、
 コップニ地主のとこで働くのもイヤイヤするし、花を売るのもイヤイヤ売るし。
 
 なにをわがまま言うてんねん!ってこっちはイライラするのよね。
 
 その象徴的な場面がこれ。

 スンヒちゃんが、お母様のお薬代を稼ごうと、友達にたのんで街に花を売りに行った時のこと。きっと、コップニ姉さんをまねたんだろうね。いじらしい。
 
この花売ってかせごーや!いえーい。

街なんてあまり来ないからドキドキ。
花が売れないから、歌ってやる!
スンヒちゃんが、花が売れないから歌いだすと、

あまりの歌の上手さに人が集まってくる

人人人だかりの中、ちゃりんちゃりんとお金を落としていく人がどんどん現れる。

そうすると、コップニお姉ちゃんがどこからか現れて、スンヒちゃんを叱りつける。



こらー、あんたは物乞いかー!
コップニは、

「あたしたちは貧乏してても乞食じゃないのよ」とか、

「あんたまでバカにされて花を売ることはない」とか、

スンヒちゃんに怒鳴る。

まあ、お姉さんとしての気持ちはわかるんだけどね。
妹がバカにされているのに耐えられなかったという面。

でも、わたしなら、

「でかしたぞー!こんなに稼いで、

あんた、えらいわー!

あんた、もっと歌い。

あたし、缶もちしてあげるー」

ってほめちゃう。


共産主義って、表面的には、武士は食わねど高楊枝みたいな理想を大多数の人に平気で強制するところがある反面、ほんの一部の権力者のみが現実的には「金儲け」に走る

共産主義の権力者らこそ、品性のないブルジョワジーのそのもの
あたしと同類。同志よ!ちゅ。


そして、わたしが違和感を感じたり、
コップニあれイヤこれイヤ攻撃イラっとしたのは、

貧しくても、お母さまやスンヒやコップニの美しく気高い心の人たちにとっても感動する一方で、現実に彼らはしあわせになっていない事実に、彼ら自身が不思議を感じていないことに、悲しさを覚えるからだと思う。

でも、これこそ革命映画
違和感をかんじる自分は正常なんだわ。



⑤さて、最後に、
これもまた、同じトピックになると思うんだけど、

コップニのお兄さんの金哲勇は監獄で死んだと思われていたんだけど、
なんと、生き延びて朝鮮人民革命軍(抗日パルチザン)に参加していた。

彼が、最後、村に帰ってきて、
地主や番頭といったブルジョワジーたちを一揆を起こして倒すんだけど、


あのシーンを見た時は、

「きゃー。なんてシーンなのこれは!?
地主を倒すってあなた、

このイメージって下手したら、

金王朝の体制転覆につながりかねないってこと考えなかったのーーー???」

とわたしは狂喜した。
がおー!
地主たちはこてんぱんに

でも、そこはさすが共産主義!
緻密に、周到に、念入りに、共産主義に根付いた革命映画なのこれは。

プロレタリアートの不満は、ブルジョワジーにのみ向けられるように、ちゃーんと仕組まれている。



でた!

そうなの。いつも日帝が悪いの。

どーん。コップニ、学びます!

そして、今日も花を売る~

ってな感じで一件落着。

そうかー。
人々が貧しいのは、すべてブルジョワジーや日本帝国主義のせいなのよねー。

結果的には、お母さんだけが亡くなったけど、
お兄さんスンヒコップニは、貧しくても笑顔で生きていく~。

革命闘志ばんざーい。
まんせー。


ああ、違和感ありあり

でも、この映画、楽しかった。これほんと。
違うからこそ楽しかった。

違和感や反発をたくさん感じる北朝鮮の映画なんだけど、
昭和的なノスタルジーいっぱいの風景もたくさん出てきたし、

なによりも、現実とはかけ離れた思想に燃えて
貧しくともお互いを助け合い、真実一路に生きようとする大多数の人民の心の美しさに、純粋に惹かれるものがあった。


ああ、こんなことに感動するあたしって、
やっぱりバカだと思う。
社畜人生に疲れているからだわ。

あたしを搾取している会社の役職連中を
金王朝にいますぐ粛清してもらいたい。

そして、あたしは花を売りに街へ行くの。


おわり。


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花を売る乙女 (1972) おまけ

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