あらすじ:3人を殺した死刑囚と3度の自殺未遂をした元歌手との心の交流。死刑執行されるまでの幸せな時間。
※ネタばれあり。
いやあ・・・
こんな作品だったんだ。
見終わってびっくりした。
かる~い恋愛もので、どっちかが病気で死んじゃうのかな~って推測しかしてなかった。
いやあ・・・すごい映画だった。
見てよかったなぁ。
とっても感動した。
というか、こういう生や死といった普遍的なテーマに果敢に挑戦する韓国映画って、やっぱり好きだなぁ。
日本なら逃げて挑戦しないんじゃないの?
もしくは、お得意のあいまいな表現で逃げるとか。
争うのきらいなお国柄だもんね。
ま、そういうところがいい時もあるんだけど。
わたしが一番感動したのは、
この映画にでてくる胸を打つ言葉の数々かな。
会話としてとても自然なのに、文学的で、
見ている観客の心の中に雪のように降り積もる。
何気なく降り積もるのだけど、心がすこしずつ感動して、癒されていくんだよね。
あまりにも印象に残る言葉が多いから、
わたしたくさんメモをとった。
ところで、
私的には、この映画の主人公は、じつはカン・ドンウォン扮する死刑囚ではなく、
死刑囚との会話を通じて、母親にたいして長い間恨みを抱いていたユジョン(イ・ナヨン)のような気がした。
少なくともわたしはそう感じられた。
金持ちのユジョンが人として変わっていく過程で、
貧しく劣悪な環境で育ったユンスの存在は欠かせない。
まったく接点のない別世界の人間を対峙させながら、
ユジョンが死刑囚であるユンスの悲しみから学び、観客もまた2人から学んでいくという構図。
じつは人の悲しみは同じであり、だれかに愛されたり許されたりしなければ生きられない小さな存在なのだということを
見ているわたしたちはいっしょに感じとっていく。
最初、ユジョンが荒れ狂って母親に毒づく姿は痛ましい。
自分の体をも傷つけ、自分は要らない人間だとして、まったく大切にしない。
観客は、どうして彼女がこんなに荒れ狂うのか分からない。
ユジョンは、学生の頃、自分を強姦した従妹ミンソクのことをずっと憎んでいる。
でもそれ以上に憎んだのは、被害者である娘を抱きしめたり、ともに泣いてくれなかった母親だったんだね。母親にたいする根雪にも似た怒り。
被害にあった直後の、自分の娘に、
「もういいから、だまりなさい」
「バカ言わないで」
「おまえがだらしないからよ。恥を知りなさい」
こんな言葉を吐く母親っているんだろうか。
こっちが傷つくほどだ。
そして、ユジョンが後半、入院している母と対峙し、母に放った言葉が忘れられない。
「神様がいるなら、わたしには(これが)死よりつらいことを知っているはず。
私が何かを犠牲にすれば、奇跡を起こしてくれると信じたいの。
お母さん、死なないで
私の悪口を言って苦しめてもいい
だから生きていて」
ユジョンは、ユンスが死刑執行されると連絡を受けて、
いてもたってもたまらず、死よりつらいこと(=母を許すという行為)をすることで、
奇跡が起こってほしいと病院にかけつけ泣きながら母親を赦すと言った。
病院でのこのシーンは、
作品の中でクライマックスだったと思うし、この映画のテーマだったと思う。
娘の話を聞きながら、
母親はどう感じたんだろう。
わたしは母親の老いた姿が頭から離れない。
この人はたしかに娘に言ってはならないひどい言葉を浴びせかけ、ましてや娘の頬を打ったりもしてる。最悪の母親だ。
病院でも、特別いいお粥を作ってもらってるはずなのに、ぶつぶつと文句を言いいながらお粥を口にほうりこむ。
だが、目の前のこの母親はあれから年をとり、目はくぼみ、目や口にしわが走り、背骨も縮んだ小さな小さな一個の老婆である。
もう責めても仕方のない存在である。
母は性根は変わらないまま老いていくばかりなのだから。
母はベッドの上でみじろぎもせず、つむいたままユジョンの話を聞いている。
けっして目を合わさない。
わたしは、ユジョンがそんな母親を前に「死ぬよりつらいこと(許す)」という行動を起こしたことがすばらしかったと思う。
死刑囚の彼を赦してほしいと心から願った瞬間から、
自分も一番憎んでいる母を赦さなければならないと直観的に悟った。
この展開はほんとうに観客に訴えているものがある。
他の映画とは一線を画するものがここにあるように思う。
死ぬほど憎む人を赦すってできないよね。
でもそれを学べたってすごいことだよね。
ずっと、映画を見ながら「赦し」を考えてました。
泣きながら。
いい映画ですよこれ。
※ハッとした言葉の数々。
「なぜ命を奪った。命を助けても、100年も生きないのに!」
(殺された娘の母が面会でユンスをなじった言葉)
「愛国歌を歌ったのに、怖いよ」
(死刑執行される寸前のユンスの言葉)
「魚が人に変わるのはマジックだ。人が変わるのは奇跡だ。つらかったろう」
(ユンスが洗礼を受けた時に神父に言われた言葉)
カン・ドンウォン
イ・ナヨン
カン・シニル
ユン・ヨジョン
キム・ジヨン