(124分,韓国,「멋진 하루」)
あらすじ:ヒスは、貸したお金を返してもらおうとビョンウンを訪ねる。ニコニコと能天気で明るいビョンウンといる内、いつしかささくれだったヒスの心に変化が出てくる、一日だけのソウル物語。
※ネタばれあり!注意。
こういうストーリーだったのか。
なんともやられた。すばらしい。
また韓国映画にやられた。
脚本の見事なこと!
ハ・ジョンウの演じるビョンウンがすごくいい。
金もない、まともな職もつかない、なのに女にはやたらとモテて、返すあてもないのに次々と借金を重ねる。かといって根っからの詐欺師でも悪人でもない。
きっと神様は、こういう人間に一番微笑まれるのだろうと思った。
この映画にはとても惹きつけられる哲学を感じる。
ビョンウンは、いわゆるエリート大学を出て一流企業に勤めるような勝ち組ではない。
住むところもなく、バッグ一つもって友人宅をふらふらさまよう、賭け事好きのただの貧乏男。
だけど、彼が元恋人に借金を返すためいろんな人を訪ね歩いて頭を下げる姿に、彼ほど愛されている人間もそうそういないんじゃないかと思えてくるのだ。
そこがすごい!
なぜなら、彼を慕う人間がとても多いのだ。
彼と話をした途端、瞬時に彼を気に入る、通りすがりの女の子なんかももいたりする。
どの人も彼を助けてあげたいと思い、自分が生活するのも苦しいのに金を工面してあげようとするのが不思議だった。
それはビョンウンが積み重ねてきた徳ではないのか。
彼が損得を考えず、たくさんの人々を励ましたり助けたりしてきたからなのではないか。
スペインに店を出すなんてバカな夢をビョンウンは見ている。
確かに、それは幼稚で現実味がないのだが、本人はまじめにそれを熱く語る。
まるで小さな子供のように。
でも、彼は他人をバカにしたり憎んだりする言葉を一つも使わない。瞬間瞬間をきれいな気持ちのまま生きている。
そこがまたすごいのよー!
そんなビョンウンから、金を取り返しにきたヒスが少しずつ変わっていくのに、これも感動する。
生活も厳しく、恋人との結婚も叶わなかったヒスは、性格も刺々しさが増し、笑顔のないきつい女性になっていた。
金を返してくれなかったビョンウンを責め立てる容赦ない言葉と振る舞い。
見てて、こちらが傷つくほどだ。
物語がラストに向かうにつけ、際立ったのは、ヒスのため知り合いに借金をして回るビョンウン。
ただニコニコとやってのけるビョンウンが立派に思えはじめることだ。
彼はいろんな人に優しく、決して物事を荒立てない。
借金を繰り返す人間が、時に金を貸してやった人間に勝る。
人間の優劣は人間の浅はかな常識をはるかに超えたところにある。
まったくパラドキシカルなこの条理を呼び起こしてくれたこの作品に、ただただ拍手喝采したい。
人は思い知るべきなのだ。
人の価値は、人智を超えたところにある。
そして、ヒスは、映画を見ていた私そのもの。
少しの運の悪さを誰かのせいにして人を責める心に支配される私そのもの。
私のささくれだった心を映し出している。
ビョンウンのような美しい心がまぶしくて、しばらく言葉を失った。
神様はまったく公平だと思う。
いい作品です。
ここにある、素晴らしい一日を
わたしも送りたい。
(あとがき)
※原作は、日本人作家の平 安寿子さんだそうです。
道理で道理で道理で。ははは。
チョン・ドヨン
ハ・ジョンウ
キム・ヘオク
キム・ジュンギ
キム・ヨンミン